我々のラボでは、オミックス解析を基盤として、植物と病原菌の相互作用に関わる制御因子の探索と機能解明を進めています。

1.ムギ類赤かび病に対する植物の抵抗性関連遺伝子の機能解析と抵抗性作物の作出

我々は、植物と病原糸状菌の相互作用について研究を進めており、ムギ類赤かび病菌(Fusarium graminearum等)を中心に、植物への感染過程におけるに対する植物の抵抗性メカニズム、並びに植物病原菌が産生する病原性因子について、マイクロアレイ解析、プロテオーム解析、メタボローム解析等を活用して機能解析を行っています。赤かび病菌は、コムギ、オオムギ等のムギ類やトウモロコシの穂などに感染し、これらに甚大な被害を及ぼす難防除性の植物病原糸状菌です。加えて、本菌が産生するトリコテセン系かび毒が食物や飼料に混入すると、ヒトや家畜に免疫抑制や食中毒等の深刻な健康被害を及ぼすことから、世界的に問題になっています。我々は、植物における赤かび病抵抗性の分子機構を明らかにするため、赤かび病菌に罹病性でライフサイクルの短い、シロイヌナズナを用いて、赤かび病に対する侵入・進展抵抗性に関わる遺伝子(Thi2.4, AtERF71, NMNAT等)の解析を進めてきました。また、これらのオオムギオルソログについて、オオムギのRNAi植物を用いた解析により、機能欠失により赤かび病抵抗性が向上する遺伝子を複数見出し、岡山大学佐藤和広教授と農研機構との共同研究で、これらの遺伝子を標的としたゲノム編集作物(コムギ)の作製を進めており、赤かび病抵抗性作物の社会実装に向けて研究に取り組んでいます。

2. 植物由来の抵抗性誘導剤を用いた新たな防除技術の開発

オオムギの赤かび病抵抗性品種から単離・同定したニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)は、植物免疫を向上させることで、ムギ類赤かび病に対する抵抗性を向上させ、耐性菌が出現しない次世代型防除剤として機能することを明らかにしています。また、抗菌作用物質やかび毒産生抑制作用のあるトレオニンと組合せた天然物カクテルをコムギ・オオムギに投与することで、赤かび病の菌体量とかび毒蓄積を非常に顕著に減少させることに成功しており(名古屋大学木村真准教授、岡山大佐藤和広教授との共同研究)、安全性の高い天然素材を活用した防除技術の実用化に向けて、研究を進めています。

3. 植物表皮を用いたプロテオミクス

富山大学玉置大介特命助教との共同研究で、赤かび病菌がシロイヌナズナの表皮細胞において、開孔した気孔を探して、菌糸を植物組織内に侵入させることを明らかにし、侵入過程で発現する植物側及び菌側の両方のタンパク質を表皮組織のみを用いたプロテオミクスにより明らかにしています(図1)。

図1. 赤かび病菌は気孔から植物内に侵入

プロテオミクスやメタボロミクスを活用して、考古学試料を用いた解析や植物や藻類に含まれる生理活性物質の探索に取り組んでいます。

4. 考古学試料を用いたプロテオミクス・メタボロミクス

本研究ではこれまでの経験を活かし、高感度質量分析計を用いて、動植物遺体中のタンパク質の配列決定に基づいた種同定による動植物利用の復元、さらに歯石や土器付着物の残存ペプチドや代謝物を同定するプロテオミクスやメタボロミクスに取り組んでいます。

5. 植物や藻類に含まれる生理活性物質の探索

多様な植物や藻類から、植物の成長促進や分化に関わる新規の生理活性物質を探索・同定し、これらを活用した成長促進剤の開発を目指しています。

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